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4−1−4 今後の経営方策
今後のA社の経営方策を検討するに当たり、その方向性としては、現状の経営における特色(強み)を活かし、それをさらに伸ばすものであることが望まれる。
ここまでの分析から、A社では先に掲げたような営業展開の仕組みを作り上げ、作業船建造に関しての実績と顧客からの信頼を蓄積する途上にあるといえる。そして、現時点ではA社の経営の特色(強み)を巧く活かした事業を展開しているといえよう。
A社の今後の事業成長のためには、経営診断の結果から、以下のような経営方策が必要であると考えられる。

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A 共同化の取り組み強化
一工事当たりの利益率が低い作業船分野において、企業存続のための利潤、あるいは企業成長のための適正利潤をあげていくためには、コストダウンの追求が根本的な課題であるといえる。瀬戸内地域の造船所では、いかに仕入を安く行えるかが作業船事業の生命線であることを強調する業者もあったことは紹介したとおりである。
A社が作業船分野に積極的に取り組むに当たっては、こうした作業船建造の事業特性を十分認識し、従来以上のコストダウン努力を行う必要がある。経営における特色でも指摘したように、A社は既に自社で取り組めるコストダウン策は実践しており、その面での評価は高い。今後については、共同仕入等の共同化によるスケールメリットを志向し、一層のシステマチックなコストダウンか推進されるべきであると考えられる。
[「3今後とるべき経営方針」からみたA社の現状、「D協業化・其同化の取り組み」に対応して]
B 資本蓄積を目指した体質転換
A社のように売上が急拡大している過程にある企業の常として、急成長に伴う財務構成のひずみと旺盛な資金需要がある。また、作業船受注取引には固有の支払慣行(納品時一括払い)が存在しているため、A社固有の急成長プロセスに伴う資金需要と相まって、今後の成長の阻害要因となり得るものと考えられる。従って、この状況を改善するタイミングは近く、そのための対応が求められている。
[この経営方策は、直接的に「今後とるべき経営方針」にリンクするものではないが、経営診断の結果から、A社の企業経営上、特に必要となる経営方策であると考えられるので、ここであえて取り上げたものである。]
なお、現時点においては上記のような今後の経営方策をとるが、これについては固定・普遍的なものではなく、今後の環境変化等により都度見直しが実施され、修正・変更が行われていくべきものであることを、確認しておく。

 

 

 

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